AIの「民主化」は格差をかき乱せるか
2025/7/26
AIって呼び方がすっかり定着しちゃった。人間のために作られた知能の定義からは逸脱しているから違和感があるけど、便宜上そう呼ぼう。
OpenAIは全ての人間が高度なAIにアクセスできるようにすることを目標にしてる。とりわけITの世界では全ての人間が何かにアクセスできるようにすることとか、自治に関われるようにすることなんかを民主化と形容するね。確かに無料でアクセスできるモデルでも十分使い道が生まれているから、OpenAIの言うことに嘘はないんだと思う。月数千円の課金で手に入る力も相当なもの。月数千円を捻出できない層はまずここで切り離されうる。価格差がある限り格差がある。 ただし、面倒で作ってこなかったちょっとしたツールを爆速で作らせることができるようになったり、NotionやObsidianみたいなノートアプリケーションとの連携で簡単に情報を整理できたりするようにはなった。新たな格差を生みはすれど、豊かさの底上げには成功しているともいえる。責任あるプロダクトにがっつり組み込めるようになるのも時間の…… 精度とコンテキストウィンドウと使用者の能力の問題だと思う。
格差が開いたり縮まったり(、あと一応革命も)といった格差構造の変化が起きるときには、それぞれの層の間にいる人たちが、自分がどちらの側に回収されるのかといっててんやわんやする。何もしなければ下に固定され、何かして運が良ければ上に行ける。上に行ったとしても固定されることはないけどね。成り上がりはいろんな理由で歓迎されないもんさ。
格差構造の変化。格差の攪乱。混乱に乗じてのし上がるチャンス。あたいの肌感からいうと、AIは知的な面での中間層をエンパワーする。上位層には必要ない。下位層には扱えない。暗算できる人に電卓は必要ない。暗算できないけど計算が必要な人には電卓が必要。計算を知らない人にとってはただボタンをぽちぽちするだけのおもちゃ。自分にできないことが明確で、これができれば楽になるのになあって思ってる層に力を与える。
そしてゴールドラッシュのときには、ツルハシを売る人が伸びる。情報や成果がゴールドで、AIはそれを掘るツルハシ。このAIバブルではゴールドよりは成功率が高いかもしれないし、ツルハシがゴールドの質そのものを変化させる。ツルハシメーカーは元々持っていたり投資を募ったりして得たとんでもない量の金(きん、かね)とモノを使って、さらにとんでもない量の金を得る。 そうして得る金が世界の格差を広げうる量だということをOpenAIのサムはわかっているから、OpenAIが作れる限り高性能なツルハシを誰でも持てるようにして、みんなに自力で格差をのし上がってきてもらおうとしてる。自身の意欲次第で成長できるようにするのはとても良いと思う。
https://gigazine.net/news/20250530-hugging-face-humanoid-robot/
これは忌まわしき第三次産業だけの話ではなくなってきたよ。AIモデルのGithubみたいなことをしてるHuggingfaceはオープンソースで、人型のロボットや3Dプリンタで作れるロボットアームを発表してる。人間のように働かせるまでには遠く及ばないけど、たぶんそれはLLMも一緒。こうして情報でも物質でも安価に高度な物を手に入れられるようになってきたから、お偉い人間様は自分の想像力をより大胆にぶん回せるってわけ。
これからはそれが前提の生産になる。いったいどれだけの人がこの進みすぎた知的メリトクラシーを乗りこなせるんだろう…… あたいはそれに追い回されず、好きなペースでぶん回して遊びたいよ。